利益は、何とでもなる?!中小企業の決算書の「実態」
我々、会計事務所で働く者は、中小企業の決算書の「利益を信じていません」・・・
とは言い過ぎ?でしょうか。。。
上場企業の決算書と決定的に違うのは
「第三者のチェック」が入っていない
というところです。
上場企業ならば、公認会計士による「監査」を経て公開されていますから、
原則として「一般に公正妥当とされる会計基準」に準拠して作成されています。
ですから、一定の「信用」があるのです。
それに対して、上場していない企業の決算書は、
会社と顧問税理士という「内輪」で作成されており、
第三者のチェックが働いていません。
我々が言うのもヘンですが、税理士が作成した決算書の多くには「いろんな細工」がしてあるものです。
「経常利益」は何の役にも立たない
下記の決算書を見比べてみましょう。
- A社:売上高1億円:経常利益1000万円
- B社:売上高1億円:経常利益3000万円
両社とも、売上高は、同じですが、
B社はA社の3倍もの経常利益を計上しています。
これだけを見ると、B社の方が利益が多く、収益性が高いように見えます。
しかし、追加情報として・・・
- A社:役員報酬:5000万円
- B社:役員報酬:1000万円
だとすると、どうですか?
「役員報酬をゼロ」として仮定すると、
- A社:経常利益:6000万円
- B社:経常利益:4000万円
というように、B社に比べて、A社は、1.5倍の経常利益、ということになります。
役員報酬をいくらにするかは「原則自由」なので、この例だと実は、A社の方が「儲かってる」ということになります。
以上で分かるように
「役員報酬の決め方で、利益は増えたり減ったりする」
というのが実態です。
「減価償却」は自由(?)
同様のことが「減価償却」でも言えます。
- A社:売上高1億円:経常利益1000万円
- B社:売上高1億円:経常利益3000万円
前述と同じ例で考えましょう。
A社は「減価償却を満額」しているのに対して、
B社は「償却をしていない」とすると、
B社は、A社の3倍もの利益を計上していますが、
その実態は「しなければならない償却をしていない」からであって「粉飾決算」ということになります。
その他にも・・・
例えば、赤字なので、禁断の粉飾決算に手を染めたとしましょう。
最も簡単なのは、在庫の水増しや、売上の前倒し計上です。
それで「損益計算書」は、たちまち「黒字」に変身できるものです。
しかし、その反動は「貸借対照表」に現れます。
・昨年と比べて、在庫が多いな・・・
・不良債権でもあるのかな?売掛金が多いぞ・・・
など、匂ってきます。
反対に、脱税の誘惑に負けた時も同様です。
売上の一部を削れば、その瞬間、利益は圧縮されます。
あるいは、仕入を水増しする、在庫を隠す・・・などなど。
伝票一枚、仕訳一つで利益は増えたり減ったりします。
つまり「利益は何とでもなる」のです。
しかし、その反動は「貸借対照表」に現れたり、前期比較すると、利益率のバランスを崩していたりなど、その「形跡」が残ります。
プロの目は誤魔化せない
会計のプロは上記のような視点で見ています。
決算書の体裁をどれだけ繕っても、プロの目は誤魔化すことはできません。
「会計のプロ」は、我々税理士だけではなく「国税局や税務署」「銀行マン」「取引先の経理マン」など、彼らも、同様のチェックポイント・視点を持っています。
他にも「概算でキャッシュフローをみる方法」「資金のスピードをみる方法」「資金の滞留場所をみる方法」などがあります。
売上高や利益を操作しても、殆どの場合「匂います」。
「対処療法」では、何ともならない「現実」なのです。
改めて「バレバレの決算書」になっていないか、顧問税理士に確認してみてください。