企業の収益力、つまり「稼ぐ力」があるかどうか?を観察するときの大切な視点があります。
それは「利益(損失)には2種類ある」という視点です。
その2種類とは「外部要因損益」と「内部要因損益」です。
文字通り、外部・社外の理由や原因によって出た損益と、内部・社内の理由や原因によって出た損益です。
外部要因損益
外部・社外の理由や原因によって出た損益には、下記のようなものがあります。
- 景気の変動による損益
- 為替の変動による損益
- 災害や事故により発生した損益
- 特需を原因として発生した損益
- 法律の改正等によって発生した損益
- 同業他社の撤退によって発生した損益
内部要因損益
内部・社内の理由や原因によって出た損益には、下記のようなものがあります。
- 営業努力によって拡販して発生した利益
- 生産性の改善による利益率のアップ
- コスト削減努力によって発生した利益
- 管理不行き届き等による事故により発生した損失
- 新製品の開発、販売によって発生した損益
全く同じ利益の2社を比較
下記のA社とB社の経常損益は、まったく同額ですが、印象が違うはずです。
A社もB社と同様に50の経常利益を計上していますが、その中には為替差益が20含まれています。
つまり「外部要因損益」が含まれているのです。
営業利益を比較してみると、A社の営業利益率は30%であるのに対し、B社は50%です。
この例を見る限り、B社の方が「稼ぐ力を持っている」と判断できます。
しかし、一般的には「外部要因損益」と「内部要因損益」を区別することなく「経常利益率」で判断しがちです。
要因別損益計算書
フォーマットのサンプルをご紹介します。
損益計算書を「外部要因損益」と「内部要因損益」に区分したフォーマットです。
この例によると、一見、予算を達成しているように見えますが、外部要因損益が4,800千円なので、内部要因損益は、予算未達、ということが分かります。
「おかげさまで、今期も予算を達成しました。みなさん、お疲れ様でした」という挨拶があれば、違和感があるはずです。
「なんとか、予算は達成しましたが、それは、****の外部要因があったためで、実際は、約60%の達成率でした」というコメントが適切です。
また、反対に、内部要因損益では達成していたのに、為替変動などの外部要因で予算に届かなかった、というようなケースもあるでしょう。
まとめ
以上のように、決算書を「鵜呑み」することは、判断や評価を誤る恐れがあります。
どんなときも、その「数字の裏側」を見る視点が非常に大切なのです。