この記事のポイント
損益分岐点の計算式
世間一般で知られている「損益分岐点」、損益がトントンとなる売上高。
したがって「損益分岐点売上高」と、丁寧に表現されることもあります。
試しにインターネットで検索してみると、
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷{1-(変動費÷売上高)}
と、難解な計算式が紹介してあります。
一般の人々のみならず、税理士や会計士でも、多くの人がこの計算式を「信用」しています。
この計算式、おかしくないですか??
そもそも難しい計算式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷{1-(変動費÷売上高)}
方程式や公式に(カッコ)が含まれると、それだけで難しい印象を受けます。
(1-(変動費÷売上高))・・・これって「限界利益率」のことです。
書き換えれば、
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
と、極めてシンプルな公式で表現できます。
(固定費;1000万円)÷(限界利益率:20%)=損益分岐点売上高5000万円
・・・固定費が1000万円、限界利益率が20%であれば、最低5000万円の売り上げが必要ですよ!
・・・5000万円を割り込むと赤字ですよ!
という計算式です。
だから、経営者は5000万円を目指します。
おかしくないですか?
本当に、5000万円を目指すのですか?
本当に、5000万円で正しいですか?
売上は4000万円で十分!
「売上高は4000万円で十分!
5000万円を達成したときには、250万円もの利益が出るよ!」
という経営者がいます。なぜでしょう?
この経営者は、売上の努力ではなく、限界利益率の努力をしたのです。
今まで20%だった限界利益率を
仕入れ値の見直し、価格改定によって、25%に改善したのです。
ということは・・・
(固定費;1000万円)÷(限界利益率:25%)=損益分岐点売上高4000万円
となったのです。
つまり・・・
売上高4000万円×25%=限界利益1000万円
固定費が1000万円なので、クリア。
さらに、売上を伸ばし
売上高5000万円×25%=限界利益1250万円
となったので、利益が250万円出た、ということです。
売上至上主義からの脱却
なぜ、損益分岐点売上高が「おかしい」のか、お気づきいただいたと思います。
「損益分岐点」に気を取られると、量的に売上を目指してしまいます。
もう一つ大切な「限界利益率」が「前提条件」になっているからです。
あえて、極端な言い方をすれば
「限界利益率の改善をせず、売上だけで分岐点をクリアしなければならないライン」
という、計算式なのです。
結果として、そうなる場合も多々あります。
しかし、限界利益率を意識せず、売上高だけを追いかける、という「根性経営」になる危険があります。
最悪な場合は、損益分岐点売上を目指すあまり、値引き販売(=限界利益率の低下)をするという笑えないケースも現実にあります。
もう、本末転倒ですね。
損益分岐点売上高は、評論家に任せておけばよい
冒頭の
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷{1-(変動費÷売上高)}
という一般の計算式は、評論家や分析屋に任せておきましょう。
経営者は「損益分岐点売上高」ではなく「損益分岐点限界利益」を確認しなければなりません。
「損益がトントンとなる限界利益はいくらか?」
↓
「固定費をクリアする限界利益」
↓
「固定費はいくらか?」
だけでいいのです。
固定費以上の限界利益を出せば、黒字です。
そのための「売上高×限界利益」の組み合わせを考えるのです。
上記の例で示すと・・・
固定費が1000万円なので・・・
限界利益率20%→売上高5000万円
限界利益率22%→売上高4546万円
限界利益率24%→売上高4167万円
限界利益率26%→売上高3847万円
という具合です・
経営者がおさえておくべきポイント
- 損益分岐点売上高に囚われるな!
- クリアすべき固定費を把握せよ!
- 限界利益率の改善を徹底的に考えよ!