決算書の見方・読み方で大切なことがあります。
それは「会社の事情を知らない人が見たら、誤解しないか?」という視点です。
「決算書」は、一人歩きし、知らない間に誤解を招き、あなたの会社の評価を下げてしまっていることがあります。
我々、税理士・会計事務所とは違い、銀行や税務署は、内容の詳細情報を持たず「決算書のみで判断」しなければならないから無理もありません。
さて、決算書はどんな誤解を受けるのでしょうか?
この会社、資金繰りが苦しいだろう、という誤解
資金繰りで苦しくなる最も大きな要因の一つが「回収スピード」です。
どれだけ売上が上がって、利益が出ても、入金がなければ、台所は火の車です。
一般的に、回収スピードは、次のようにして見ます。
- 損益計算書の売上高=1億8千万円
- 貸借対照表の売掛金=3000万円
だとすれば、
3000万円÷(1億8千万円÷12ヶ月)=2ヵ月分
というように、売掛金は、月商の何か月分か?という見方をします。
もし、売掛金残高が、3ヶ月以上あるようならば、
「回収が遅く、資金繰りが厳しい会社」
というような見方をされることがあります。
この会社、たぶん粉飾しているぞ、という誤解
「社長、不良債権はありませんか?」
「ん?ないよ!」
「締め&回収は?」
「20日〆の翌月末回収やで。ナンデ?」
「あ、そうですか・・・、いや、ちょっと気になって・・・」
もし、決算書の売掛金の残高が40日以上になっていたら「ツジツマが合わない」ことになります。
社長は、ちゃんと翌月に回収して、不良債権もない、と言っているにも関わらず、決算書には、それ以上の売掛金残高があるのです。
この場合、真っ先に疑われるのは「粉飾」なのです。。。
この会社、過剰在庫だ、という誤解
前述の「粉飾」の見方は、在庫でも同様です。
「社長、不良在庫はありませんか?」
「ん?無いよ!」
「普通、どれくらいの在庫があるんですか?」
「そやなあ~3ヶ月分もあったら充分や!」
「え?あ、そうですか・・・」
- 損益計算書の仕入高=1億2千万円
- 貸借対照表の在庫=5000万円
もし、社長が言うとおり、3か月分の在庫ならば、
仕入:1億2千万円÷12ヶ月×3ヶ月=3000万円
程度の在庫ということになります。
なのに、なぜ5000万円も在庫が計上されているのか?
という疑問が生じます。
そうすると、次の質問は、
「社長、デッドストックありますか?」
「そやな~ちょっとくらいやったら、あるけど、なんで?」
「もっと多くないですか?」
「いや、そんなもんやで!」
「期末に大目に仕入れましたか?」
「お~そうや、決算ギリギリでちょっと多めに仕入れたなあ」
「ほな、決算日では、いつもより在庫、多いですね」
「そうや、決算の在庫はいつもより多いはずやで」
という会話があって初めて「疑いが晴れる」のです。
まとめ
あなたの会社の決算書を見るときに「補足情報」を得た上で判断する人ばかりだと心配は要りませんが、中には、勝手に想像して、会社を判断する人が少なくありません。
ですから「決算書の一人歩きで誤解を招く」ということが無いように、金融機関など、重要な取引先には、「積極的に補足情報を発信する」ということが、重要です。
また、税務署に確定申告する際にも、あらぬ誤解から調査対象にされて、マークされる、というのも損な話です。
過去数年分の決算書を並べてみて、特別な事情があるならば、その事情を「事業概況書」に記載しておくのも一つの方法です。
外部に決算書を提出する、つまり情報提供するわけですから、出来るだけ、自社にとってメリットのある発信に心がけてくださいね。